最近日本でも話題の「フォーミュラリ」

■フォーミュラリ(Formulary)の定義
Continually updated list of medications and related
information, representing the clinical judgment of physicians, pharmacists, and other experts in the diagnosis, prophylaxis, or treatment of disease and promotion of health.(Am J Health-Syst Pharm. 2008; 65:1272-83)
疾患の診断、予防、治療や健康増進に対して、医師を始めとする薬剤師・他の医療従事者による臨床的な判断を表すために必要な、継続的にアップデートされる薬のリストと関連情報(*1)

アメリカでは、フォーミュラリとは保険会社による保険支払い対象医薬品のことらしく(*2)で、経済性、エビデンスと安全性を考慮して保険会社が作成しているものだそうです。高品質な後発医薬品をリストアップすることにより、後発医薬品の利用促進に効果を発揮してきました。保険会社は製薬会社との価格交渉を行い、フォーミュラリへ薬の掲載を行います。それと同時に、医師に対してはフォーミュラリに掲載されている薬の利用を推奨します。日本とは少し位置づけが異なるような気もします。

現在、厚生労働省、PMDAなどの関係者によって「最適使用推進ガイドライン(*3)」の今年中の策定に向けた議論がすすんでいますが、一定基準を持った処方(最適処方?)に大きく関わるのが、この「フォーミュラリ」です。フォーミュラリの活用は、病院の薬処方のあり方、薬剤師の業務、製薬企業のマーケティングに大きな影響を与えると思います。

厚生労働省は11月20日に開かれた社会保障審議会医療保険部会で、日本におけるフォーミュラリの活用状況を発表しました。前述のように米国、イギリスなどでは積極的な利用がされていますが、日本でも聖マリアンナ医科大学の薬剤部が積極的にこれを利用して医療費削減効果を出されています。(*4)

20170106a(*1)厚生労働省 平成27年1月20日 第91回社会保障審議会医療保険部会 資料2-3 から引用

日本で、このフォーミュラリを自治体や病院の医薬品購入担当者が作成する場合は、NDBオープンデータの利用が考えられています。このデータを用いて、使用実績の多い薬をピックアップして、重複、同種同効果の薬を一本化して、その結果をフォーミュラリとして作成して、年間購買計画を立案することができます。

また、地域医療構想でも関連してくる周辺病院や医院、その関連施設、薬局、訪問看護・介護、介護施設と共有することにより、共同購入などのボリュームディスカウントや、採用・交渉担当を一本化して事務コストの削減にもつなげることができるようになります。

データを膨大に利用し、また利用者が復習施設にまたがるフォーミュラリの利用については、クラウドITが大変便利だと思います。AWSを利用して、NDBオープンデータでデータベースを構築し、皆様に広く公開できればと考えています。
ではでは。

 

■参考にさせていただいた文献

*1 厚生労働省 平成27年1月20日 第91回社会保障審議会医療保険部会 資 料2-3より。http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000104774.pdf
*2 アメリカ在住のこばやしクリニック、小林先生のサイトより。http://www.kobayashi-naika.com/
*3 http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12404000-Hokenkyoku-Iryouka/0000138874.pdf
*4 http://www.mhlw.go.jp/bunya/iryou/kouhatu-iyaku/dl/03_09.pdf