Systematic Approachとは?

米国FDA査察報告やWarning Letterの中に、「系統だった取り組みがなされておりません。」という文言を見つけることがあります。実際どのような意味なのでしょうか? この言葉を正しく理解するだけで、日頃の取り組みも違ってくると思いますので、少し説明してみたいと思います。辞書を見ると、Systematic Approachとは、系統だった取り組みとか、組織的な取り組みという訳がつけられています。具体的にはどういうことなのでしょうか? 「御社の品質システムは、この課題にうまく取り組むためのしくみ・関連する手順書の整備が不十分なのでは?」という風に、私は理解しています。個別の指摘ではなく、システム全体の出来栄えを言われているようで不気味ですよね。

 そう言われないためには、どこから切り込まれても、対症療法的な説明ではなく、その課題に対して、いろいろな角度から分析が行われ、社内の品質システムあるいはCGMPのどこに改善の余地があり、再発防止のためにどのような手立てが最善策か、それをどう検証するか、というつながりを系統だって説明できるようにドキュメント化していることかと思います。

査察官の立場からは、この会社はどのようなポリシーや考え方を持って臨んでいるのだろう、意思決定は、誰が何に基づいてすることになるのだろうと考えます。マネジメントレビューなどで適時適切に報告されているのかなども。

 事例をあげれば、CAPA・変更管理・安全情報(MDR等)などをレビューしているときに、「この話の起点になったのは苦情受付番号○○との事ですが、その概要を説明していただけますか?」などと、話が割り込んでくることがあります。まさに系統だった取り組みを確認しているわけですね。「検討の範囲が十分でないように思いますね。」、「本当にその一件だけですか。どこまで調べましたか ?」、「本件に関しCAPAを開いていますが、Root Causeは、そうではないように感じますよ。」と言われたら辛いものがありますね。内容によっては、開発設計段階のところまで遡ることも考えておかねばなりません。そのような及ぶ範囲をきちんとリスク分析により把握して置くことも重要です。信頼性保証・品質保証のマネジャーの方々は、CAPAドキュメントのレビューや、事例研究を通じて、常にこの思考サイクルを磨いておく必要があります。確かに、CAPAのドキュメントの起・承・転・結を見ると、Systematic Approachの出来栄えがわかります。“CY2016 Annual FDA Medical Device Quality System Data”(*)なども、CAPA関連の指摘の多さ・対応の難しさを説明しているように思います。

 2000年代になり、Risk-based approachという概念が出され、さらにStructured approach,など、いろいろなアプローチが説明されています。Science-based approachという言葉も併せて、システマチックな考え方を身に着けたいものです。

(*)https://www.fda.gov/downloads/aboutfda/centersoffices/officeofmedicalproductsandtobacco/cdrh/cdrhtransparency/ucm554548.pdf